04/09/2026
9月4日金曜日。
本日もまもなく閉店です。
ふと見ると、
「ぶどうのジュレ」
と書いてあります。
いやいや。
これは「ぶどうのババロワ」と伝えたはずなのですが。
でも、ぶどうのジュレ。
こういう小さなことが伝わらないもどかしさを、
僕はもう15年くらい抱えながら仕事をしています。
自分が言ったことと、
少しずつズレていく。
じゃあ自分でやれよ。
おっしゃる通りです。
でも、自分ですべてやるのであれば、
担当する人は何のためにいるのだろう。
単純にそういうことでもあります。
もちろん、
お菓子を作るすべての作業を
自分とまったく同じようにできる人なんていません。
反対に、
僕がやるより誰かにやってもらった方が
ずっと上手なこともあります。
例えば接客。
僕は、人との距離の取り方があまり上手ではありません。
特に、威圧的な人や
必要以上に偉そうにされる方がどうにも苦手です。
高齢の女性に対しては、
幼い頃からの経験もあって、
どうしても身構えてしまうことがあります。
もちろん年齢や性別の問題ではなく、
優しい方は大好きです。
考えてみれば、
これは僕だけではなく、
案外みんな同じなのかもしれません。
だから僕は、
自分はずっと店頭の中心に立つ人間ではないと思ってきました。
しあわせのえきでは僕がシェフとして、
お菓子を考え、
名前をつけ、
味を決め、
そこに意味を持たせています。
その代わり、
僕がうまくできない部分をスタッフに託しています。
だからこそ、
商品名も、
内容も、
その商品に込めた思いも、
できるだけ間違えず、
曲げずに、
お客様へ伝えてほしい。
それを強く思います。
さて。
問題の「ぶどうのババロワ」。
僕にとっては、
実は結構大切なお菓子です。
昔、あるデパートで販売されていたババロワがありました。
ずっと記憶の中に残っていた味です。
それを思い出しながら作り、
そのお店がデパートを退店されたあとには
実際にお店まで伺って、
もう一度食べ比べてもみました。
大丈夫。
僕もちゃんと修業してきました。
同じではない。
でも、
自分の作ったババロワもちゃんとおいしい。
そう思ってお出ししています。
いや。
たぶん勝ってる。
しかも、うちの方がお安い。
なんてことも思っています。
ただ、
店のお菓子を全部僕ひとりで作っているわけではありません。
スタッフが作ったものも含めて、
いつ食べてもおいしい。
そこまで持っていくのが、
シェフという仕事の難しいところなのかもしれません。
そして今、
僕は何をしているかというと。
クリスマスケーキにもがいています。
仕入れに行って、
ららぽーとへ配送して、
その移動中もずっと考えています。
型をどうするか。
味をどうするか。
構成をどうするか。
仕上げをどうするか。
ようやく、
少し答えが見えてきました。
今年もきっと、
おいしいクリスマスをお届けできると思います。
だからこそ、
自分の思いが間違って伝わらないように。
今年もきっと、
注意書きはいっぱいあります。
注意書きを増やしたいわけではありません。
もしかすると僕は、
お客様にもスタッフにも、
ほんの少しの優しさを求めているのかもしれません。
少しだけ相手の立場を想像してもらえたら。
僕らももっと前向きに仕事ができて、
もっといいお店になれるような気がしています。
もちろん、
甘えるつもりはありません。
こういうことを書いていること自体、
甘えと言われればそうなのかもしれません。
でも。
書かなければ伝わらない。
言わなければ伝わらない。
態度や行動だけで、
その人の考えや思いまで
全部理解することなんてなかなかできません。
だから僕は、
できるだけ言葉にしたいと思っています。
そしていつか、
言葉にしなくても分かり合えるような関係になれたら、
それが一番なのでしょうね。
勝手にイメージを膨らませて、
本当は全然違っていた。
そんなことが、
世の中にはたくさんあります。
だからこそ、
正直に。
まっすぐに。
少なくとも、
しあわせのえきのお菓子については
嘘のないものを作りたい。
そう思っています。
お菓子を作って、
お客様に心からの歓びを。
今日も変わらずご来店いただき、
本当にありがとうございます。