15/11/2024
「全国豆腐品評会で農研機構賞を受賞しました」
9月に行われた全国豆腐品評会の結果が出ました。
木綿豆腐の部門で、農研機構賞を受賞しました。この賞は、農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)という国立の研究開発機関の審査により、大豆の特性を引き出した製品や、地大豆を巧みに使用した製品、希少価値のある大豆を使用した製品に授与される賞とのことです。
大豆の特性という点から、僕が作っている豆腐について少し紹介させてください。
僕は創業からずっと地元産のギンレイという大豆を使ってきました。全国でもここ長野県の上伊那地域が産地で、糖度が高くおいしい大豆です。ただ、たんぱく含有量が少ないので、一般的には豆腐を作るのには向いていません。
実際、長野県で一番多く栽培されているナカセンナリと比べても、しっかりと固まらず(固まり方が緩くなる)、歩留まりもよくないです。しかし、桶の中でにがりで寄せた直後(これを「寄せ豆腐」と呼びます)のなめらかな舌触り、爽やかな香りは格別なものです。
そこで、僕はこの寄せ豆腐のおいしさを閉じ込めた木綿豆腐を作りたいと思いました。寄せ豆腐を崩して型箱に盛り込み、上から重しをして水を抜き、四角く成形したものが木綿豆腐です。
型箱への盛り込み方や、豆乳の濃度、寄せる時の温度など、試行錯誤して、現在のような木綿と絹ごしの中間のようなスタイルに辿り着きました。
元々しっかり固まらないギンレイですが、あえてにがりの量を最小限に抑えることによって、なめらかな食感を出すことを心がけてきました。にがりの量を増やせばもっとしっかりした食感にもなりますが、それはギンレイの良さを活かすことにはならないような気がしています。
はじめのうちは、型箱に敷く布にくっついてしまったり、ポヨンポヨンの柔らかすぎる豆腐になってしまったり、大きすぎてパックに収まらないこともしばしばでした。ようやく今はまあまあ安定して作れるようになりましたが、それでも毎回違ったものになります。
そんな豆腐だと理解して買い続けてくださるお客さまや取引先の皆さんに感謝しています。
香りや風味については、かまどを使い、薪の火でゆっくり炊き上げることによって、青臭さを消して、香ばしく豊かな風味を引き出すことができると思います。消泡剤を使わないことも、豆の香りを活かす上で重要なことです。
直火で炊くと焦げやすいので、濃い豆乳は炊けませんが、かえってその方が豆の固有の風味を活かすことができると思っています。
ある程度の安定した品質の豆腐を作るには、各種の条件を揃えたり、技術的な安定性も必要だと思いますが、僕は日々刻々と変化する大豆の状態を五感で感じ取る感性の方がもっと大切だと思っています。そのように大豆に寄り添い、そして、自分が作るのではなく、かまどや大豆という自然物の力に委ねた豆腐づくりは、結果的においしいものを生み出し、作る人を癒すことにもなり得ます。
これから湯豆腐や鍋に豆腐が活躍する季節です。火を通してふんわりとして、香りが立つ時が、豆腐の真骨頂だと思います。まだ召し上がったことがない方も、ぜひお召し上がりいただきけたら嬉しいです。