15/09/2026
本の寄り道
「ポップ・スピリチュアリティ メディア化された宗教性」堀江宗正 著, 岩波書店, 2019
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有機、無農薬、在来、伝統、数値化出来ない農家の肌感覚技術や、土地ごとの特徴ある風土と空気感。
こうしたワードとともに仕事をしていると、相性がよいのか、ときおり出会うのが「スピリチュアル」という言葉です。この言葉がどこから来て、何を意味しているのかはあやふやなまま接してきました。特にこれに附随するものとしての「パワースポット」「自然の力」「気」「大地の"エネルギー"」…こうした表現を、とくにお茶の香味を表現する際に使っている人を見ない日はないほどです。
私自身、こうした表現は使わないようにしてきました。自分の主観に基づかないし、解釈幅が広すぎて、たとえ同じ言葉で共感していても同じ体感を指しているとは限らないからです。
いずれにしても特に「スピリチュアル」は、それから距離を置こうとする人や、逆に日々の営みに取り入れ深みを追求する人など、好むと好まざるとにかかわらず日常的に、とくにSNSにおいて出会う言葉です。
私自身、うまく説明のできない不思議な出来事をこれまでに何度か経験しています。そのたびに、例えば「霊や先祖のはたらきかけ」が自分にも起きた、それを感知できるアンテナがあった「と思いたい」欲が働きます。
とはいえ、世間で「スピリチュアル」を冷笑する向きが多分にあることもわかっており、私のなかにもそういう部分がやはりあるのも事実です。「近寄るべきではない領域」と私自身は認識していました。
この本は「スピリチュアル」「スピリチュアリティ」といった言葉に、宗教学・心理学・大衆文化などの方面から光をあてています。過去から現在までの意味と広がり、変化を、特にオウム真理教事件から江原啓之氏のブームに至るまでを分析し、学術的に明らかにする試み。
読後、自分自身がいま感じている「距離をおくべきもの」という感覚がなにゆえ生まれているのかを少し理解できたと思いますし、一方でそれとの関わりを持たないことは恐らく非常に難しいと思えるほどに、グラデーションの幅広い考え方であることがよくわかりました。
「スピリチュアル」と聞けば好意的な反応がわきおこる人、拒否反応を起こす人、そのいずれのタイプの人であっても向き合う価値のある分析です。著者の目的はスピリチュアルに疑義を呈することではなく、その社会のなかでの拡散と変容を客観的に記すことです。
高槻市立中央図書館さん、蔵書にしてくれていてありがとうございました。(島本町民でも貸していただけます!)